自分は独立前は色んな業界で営業マンをずっとやてきましたが、営業といえば何でも屋で色々な業務を1人でやります。ざっくり思い浮かんだものを並べてみますね。
- 新規開拓リスト作成
- 新規アプローチ方法の考察
- 新規アポ取り
- 見積もり
- 提案資料作り(商品の勉強とセールスポイントを考える)
- 顧客訪問と提案
- 契約書作成
- 契約までのクロージング(断られないような流れを考える)
- 顧客管理
- 納品と連絡、確認
- 料金回収と催促業務
上記を全て担当を分ける事はできると思いますが、そもそも、これらを切り分けて考える頭がないというか、シンプルに商売に結び付く行動を思いついて実行しているのが営業マンです。
それに対し、Web業界に入ると、何を作るかという企画業務、どうやって作るか考える監督業務、費用を割り出す見積もり計算、提案作成、デザイン前の計画、デザイン作成、デザインのWebサイト化、システム絡みの構築などなど、なんか色々な作業によって人が分かれます。
プロデューサーやらディレクター、デザイナー、コーダー、エンジニア、担当する業務に応じていろいろと呼称があるんですね。それは自分の仕事じゃない、というのも明確になってきます。
ですが、この業界に初めて参入した営業マン、そういった制作全般を1人で請け負うのを当然という頭があります。デザイナーもコーディングどころかシステムもできて当然というか。少なくとも僕は業界に参入した頃はそうでした。
全く見ず知らずの相手に売り込んで契約取ってくるし、前述の通り、経理や事務の人がやってくれそうな作業も行うのが当たり前です。そうなると制作の仕事は全体の中のごく一部で、仮に企画からデザイン、実装までやったとしても、営業マンよりも仕事の範囲は狭く楽とさえ考えていたりします。
これがコミュニケーションの大きなズレを伴い悲劇を生むのですが、、、
だから、立ち上げ当初は、小規模とはいえ、Webサイトを1人で新規開拓から納品まで行ってました。徐々に分業制が当たり前という事を知ったのですが、、、
前置きが長くなりましたが、そんな中で得た知識で、プロデューサーやディレクターの仕事というのは、どうやらこんな仕事らしいというものを紹介します。
あまり、制作というものに携わった事のない業界の方からするとWeb制作会社って対応悪いという声をよく聞きますので、付き合う上で何らか参考になればと思います。※他の制作会社に勤めた事はないので、少し異なる場合もあります。
プロデューサーとは?
「プロデュース:生み出す」という意味の通り、生み出す仕事ですが、「形にする」という方が合っているかもしれません。
Web制作でのプロデューサーの役割は、お客様の要望の実現方法を考える役割になります。お客さんが「こうできたらなぁー」という漠然とした欲求を何らかの形にします。
とにかくカッコいいサイトにしたい、こういう風に思われたいとか、お客さんに沢山来て欲しいとか、でも、こんなお客さんは嫌だなど漠然とした要望を具体化したいのです。形にするには、どんなスタッフでチームを組むべきか、どれくらいの時間が掛かるか、どれくらいの費用が掛かるか、といった現実的な部分も明確にする作業が必要です。
制作は人件費ですから予算もここで決まってきますが、時として自社営業マンが提案して合意を得た内容になりますので、営業マンの提案に差がある予算だった場合、増えた予算に合意いただく提案もしなければなりません。
自社サービスでのプロデューサーは、それこそ、ゼロから生み出す仕事になりますが、Web制作のプロデューサーは、既にお題があるところからスタートの傾向が強いです。いずれにしても、プロジェクトの枠組みがここで決まるので、ズレがあると後々大きく影響するので責任も大きく経験豊富で単価の高いスタッフが任されます。
追記(2017/06/14):
「こうした方が御社にとっていいはず」と考えていないクライアントに提案してゼロから生み出す新規開拓的な役割もプロデューサーの仕事だと思いますが、Webプロデューサーがいる制作会社は仕事が降ってくる状況も多く、お客様発信の要望があってからヒアリングしてカタチにする役割がほとんどのような気がします。
ディレクターとは?
ディレクション:方向 の通り、方向を指し示すポジションの人です。
Web制作でのディレクターの役割は、スタッフ(作業者・実務者)への指示を出す役割になります。
大枠の案が決まり、予算やチームも決まったら、現場を統括するのがディレクターになります。必要な文章や写真、動画などの原稿集めや作成。検索エンジン対策などのマーケティングを配慮した原稿調整。掲載する情報の優先順位や配置レイアウトから、見た目のスタイリングなどのデザイン。デザインをサイトにする際のコーティング方法。導入するシステムはどうするか?具体的な動作や入力項目、機能など。
要件定義やワイヤーフレームといった明確な形で指示書を作るのはディレクションの役割です。
制作は具体化していく中で新しいアイデアが閃いてしまう機会が多いですが、そのアイデアはそれまでの作業(つまりコスト)を台無しにする事もあります。ディレクションは、そういったところも出来るだけ前もって把握して初動を気を付ける必要があり、最小限の工数でクライアントに意思決定してもらっておくなど制作物のズレが最小限に済ませられるように奔走します。
豊富な経験がある人間が最適で打ち合わせ回数も多く、大抵はデザイナーなど何らかの実務経験のあるスタッフが最適で単価も高くコストもある程度かかってきます。
プロデューサーやディレクターがいない案件のリスク
プロデューサーやディレクターのいない案件はギャンブルと同じです。
100万円以下の制作であれば、プロデュース費やディレクター費をカットすれば2割~4割安くなるかもしれません。指示出しなど手間は掛かりますが、カットして思い通りの制作物が出来上がれば儲けものです。
もしかしたら、読んでいる方の中には個人のクリエイターに1度か2度作ってもらって運よく満足できるサイトが出来上がった事もある方もいらっしゃるかもしれませんが、それが普通とは考えない方が良いです。少なくともディレクターがいない場合は制作物の理想とのズレが大きくなる方が大きく、クライアントは「この状態で公開するなんてみっともない!」と憤りを感じ、制作側は「指示が分かりにくい!」「伝達漏れが多すぎる!」「考えがブレすぎる!」と不満を感じ、どちらも不幸になるリスクが高くなります。
仕事をあげようと思って独立したばかりの友達に依頼したら、依頼者は制作物に納得いかず、制作者は追加費用が欲しいぐらいだ、と双方が不満を言い出せず内心思ったまま案件が終わって関係がおかしくなるなんて事もよく聞きます。これは実際、自分にありました(笑)
そもそも思い通りの成果物が出来上がるとは考えない方が良く、少しでも思い通りに成果物にしたいから、プロデューサーやディレクターといったコストを保険として掛けた方が良いんですね。それでも保険なので必ず思い通りの成果物になるわけでもないのですが、それぐらいの考え方で関わった方がいいです。他のサイトはあんなに素敵なのにウチのは劣ると思えても、そのサイトオーナーも満足していない事もあります。
別にそんなこだわりないから、と言われる方もいますが、必ず作業がある程度進んでから気付く事が出てきます。しかし、作業後の変更はコスト高になるので変更を諦めざるを得ない事もあります。納得いかない成果物になる確率はかなり高くなるので、経験の多い制作会社は「こだわらないから任せる」という言葉は強く警戒するはずです。制作会社は出来るだけ最高のものを作りたいのです。喜ばれたいんです。だから、プロデュース、ディレクションといった作業を予算に含めて確率を上げようとします。
見積もりを見て意外と費用が高く驚かれる事もあるかもしれませんが、できればカットせず、それで制作してみて頂く事がおススメです。
酷い制作物が出来上がってきたら支払わなくていい?
自分は運よく経験した事はないのですが、「こんなの仕事と言えないから支払わない」ともめるケースがたまにあるそうです。
制作物ができたのに支払わないというのは、働いて一通り作業を終えた後に「貴方の働きは無価値だから給料支払わない」と言われたり、納品した商品を消費した後に不満を言われ支払いもされないのと同じ事なんです。モラル的に考えれば支払わないというのはあり得ないですよね?でも、なぜか、Web制作に限らずクリエイター業は、不味いと悪口を言われた上で食い逃げされるような事があるそうです。日本も治安が悪いですね。
シビアに成果に対して支払うという考えは反対ではないのですが、シビアな完全歩合の営業経験や会社もゼロから立ち上げもしてきた自分としては、クリエイターの報酬は時間換算にすることでビジネスのバランスを保てているのが現段階の見解です。クオリティを基準に費用が変わってしまうのであれば、逆に元々求めていたクオリティ以上のものが出来た場合、「50万円でしたが、今回すごい良いのできたので100万円の請求にしますね。」というのもOKとなりかねない。時間換算の方がやっぱり効率良いですよね。
もちろん、成果の基準が契約書などで明記されて、「成果とはいえない」事が明確であれば支払わない事は当然だと思います。サイトが見れないなどの機能的な問題であれば「成果ではない」ですよね。でも、それらは見られるように修正すれば「成果」になります。「見栄えが悪い」「期待していたクオリティではなかった」といった部分の成果基準はあまりにバラバラな世界だから「成果とはいえない」とするのは困難です。価値のなかったと感じられた作業も時間に応じた費用は支払って一度精算する事こそが、オーダーする側に必要なシビアな考え方だと思います。
うちも制作会社ですが、外注を使うなどオーダー側になる機会は多いです。オーダーする場合は費用に見合う良い仕上がりを期待したいので、細心の注意を払ってオーダーしています。完全お任せでオーダーしてしまう事もありますが、それで納得いかない仕上がりでも費用は必ず支払っています。ただ、次にそこに依頼しないだけです。
そもそも、制作が一通り出来上がるまで、お互いに沢山の時間が消費されています。仮に料金を踏み倒せたとしても不毛ですよね。厳しい話しを言うと、「こういうのにしたい」というコミュニケーションを怠ってませんでしたか?という話しなんです。プロデューサーやディレクターのコストが生じても伝える努力は必要です。ただ、プロデューサーやディレクターがいる場合は、プロジェクト自体を引っ張っていってくれるので、いた方が良い制作物になる確率は増えます。
途中から変わってしまう案件の追加費用について
「後からでてきた要望の追加作業」が必ずWeb制作では発生しますが、クライアントからすればある程度可視化できてからアイデアは出てくるんだから柔軟に対応して欲しいというのが本音だと思います。
ここら辺は制作サイドが「後付けの機能追加や変更は別料金になる」事を事前に理解してもらっておくべきというのは当たっていると思います。
ただ、ここら辺も契約書云々で明確にしておく事は難しいので、オーダーする側も制作側もしっかりコミュニケーション取っておくべき部分なのだと思います。制作会社を何度か使った経験のあるクライアントによっては、暗黙の了解で追加予算前提で追加作業を打診される事もあります。でも、そんな「言わなくても分かる」事に頼って仕事するのは、制作案件において怠惰でしかありません。案件のスタートでは必ず明確にしておくべき部分です。
また、一つ言えるのは、「柔軟な対応には柔軟な予算が必要」という事なんです。
広告代理店経由のWeb制作は、末端では100万円ぐらいでやり取りしているのに、売り値では500万になっている事はよくあります。それは広告代理店の企画やディレクションが高い事はもちろんですが、要望に柔軟に対応する為の保険としてのバッファ予算であるともいえます。
もちろん、案件がスムーズに進めば儲かりますが、何かあってもいちいち追加予算組まずに動きますし、利益は減ります。価格交渉はクライアントも売り手も疲れるので何度もしたくありませんし、会社によっては制作費が上がる事で稟議の手間が掛かるので、最初から大きく予算が掛かる制作も、双方が制作に集中できるのでメリットがしっかりあります。
でも、もし本来の価格でギリギリでやる場合は、柔軟に価格を増減できるような体制で都度価格交渉にならざるを得ません。うちは安いので後者になりがちですが、費用が増える更新が何度かあっても広告代理店経由よりは全然安くなりますよね。制作会社が100万円で見積もったものに追加しても500万円には到底なりませんから。ただし、お客様側からすれば、バッファ分もコミコミの方がストレスは少なくなるのは間違いありません。