Web制作のフロント営業であれば遭遇を避けられない値下げ交渉。
10年以上携わってきて僕自身が感じる納得しづらい交渉とそうでない交渉があって、納得しづらい価格交渉のパターンをちょっと載せたいと思います。
価格交渉を否定してそうな内容ですが、基本はするべきと考えており、交渉するなら真面目に真剣に交渉して欲しいので、参考にしていただけたらと思います。
1.時間生産を対等に扱っていただけないパターン
実質売上に関わる部署にいなくても1時間で最低でも5千円、ボーナスがもらえる企業なら社員1人あたり1時間で1万円~の生産性のあるビジネスをしています。
年収600万円を30代以降目指せる企業の社員の方なら時間で2万円~の収益貢献がないと会社にとってメリットない人材です。
Web制作は原価がないので良いと言われますが、売上は99%人件費なので、売上≒時間と生々しく関係してきます。その為、簡単に値下げに応じてしまうと最低ラインの1時間5千円を割ります。
1人あたり1時間2万円を稼ぐべき大企業の担当者から値下げ交渉というか「高いなー」などと言われると、「いやいや、今打ち合わせているあなたの時間単価の方が高いですよ!」と感じる事もあります。
時間あたりの生産性を対等とまではいわなくても、最低限のラインを考えて扱っていただけないと正直つらいです。
2.指示出しがざっくりしているパターン
見積もり出しました⇒出来上がりました⇒1、2回の修正でOK。となるには、指示出しの時点で明確さが必要です。
指示出しがざっくりしている案件は、本当に出来上がり後にスゴロクでいう「スタートに戻る」事が普通に起きます。
前項でも言ったように、人件費は時間です。スタートに戻る案件とそうでない案件はコストは全然変わります。
指示出しがざっくりしている場合はディレクション(現場への指示内容をまとめる作業)に時間をさかなければならなく、だから高いお金を支払っても業者を使う価値がありますよね。
だから、「プロでしょ?」と丸投げした上にさらに「プロ価格はやめてよ」と言われたら、どれだけ言葉が丁寧でも、「いじめっ子」にしか見えません。
3.「柔軟な対応には柔軟な予算」の認識がないパターン
柔軟さを求めるのは業者に依頼する目的そのものなので分かります。
でも、何度もいいますが人件費は時間でして、柔軟な対応は柔軟な時間(つまり予算)が必要なんです。
あわよくば必要以上に儲けようとするWeb業者は価格をざっくりにしますが、なるべくフェアな価格を考えている業者は「時間」で計算しているので、値引きできる妥協点はある程度用意しています。
逆に急な予定変更に対しても柔軟な予算があれば、いつでも柔軟に対応します。
生産性と関係なく収入がある方は、なかなか理解しづらいですが、制作業はここら辺シビアです。
後で変更しづらい予算ありきで仕事をしなければ難しい会社の場合は、先に予算を多めに提示してここまで対応して欲しいという「価格をもっと上げるから、ここまで頑張ってね」の交渉をした方がやりやすいと思います。
4.提案をコストに含めず求めるパターン
経験値はある程度ありますから場当たり的な提案はどんどんしますが、本当にオーダーメイドで考える提案は時間が掛かります。制作と別で「時間」が必要です。
打ち合わせ頻度が多ければ当然「時間」はさらに必要です。
しっかり利益出している制作会社は提案料として企画料、プロデュース料をコンサルティングに似た価格帯でとっています。
そこまで取らないにしても、値下げ交渉するのであれば提案や打ち合わせはなるべくカットした方が成立しやすいと思います。会って話すと安心できるし仕事している感があるので、それに甘んじると意外と無駄な打ち合わせも出てくるんですね。不透明のままよりも、打ち合わせの回数を予め決めてしまえば費用も交渉できるし、打ち合わせも緊迫感も出て有意義になるかもしれません。
5.価格の基準がざっくりしているパターン
これは本当に多いのですが、他社がいくらで掲載していたよ。というパターンです。もちろん、競合他社の価格を使って交渉するのは商取引では当たり前です。
例えばヤマザキのランチパックなら、ローソンだろうがセブンイレブンだろうが、どこにも属していない商店でも相場と品質が決まっていますが、制作は要望する内容によって価格や品質は変わります。
1ヵ月の給料が決まっているように、時間=お金で人を雇う、雇われているのですから、要望の内容によって価格は当然変わります。
そのあたりを理解せず、「だって、他安いからさー」で強く交渉するよりも、「価格の基準や根拠」がしっかりしている方の交渉の方が前向きな話し合いになります。
と、ここまで厳しい意見を言わせて頂きましたが、
値下げ交渉に喜んで応じれるパターンはどんなものでしょうか?
うちの場合は以下などのケースでは値下げさせて頂く事もあります。
- 指示内容が明確
- 求めるゴールが絞れている
- 時間を貴重に考えていただけている
- 何度かお取引があり負担少なく済む部分が明確
中には騙して儲けてやろうという制作会社もあるかもしれませんが、
正直いって、頑張ってもそんな儲からないビジネスです。制作で上場狙えませんしね。
それでも、10年近く商売続けている業者というのは良い仕事をしたいところが圧倒的に多いです。
良い仕事しなきゃ面白くないからです。
時々、付き合っている業者に不信感を抱いて、お問い合わせいただく事もありますが、
一旦踏みとどまる方向にお話しさせて頂いています。
もしかすると、もうちょっとで信頼関係を築けるかもしれないので。
ただ、最近は色々話しを聞いていると、
「酷い業者」にあたってしまったなぁーと感じるお客様も増えている気もします。
価格交渉は機会があればすべきです。
価格交渉されるの嫌だーみたいなブログになっちゃっていますが、
業者との価格交渉は機会があればするべきですし、
提案や柔軟性を求めるべきと考えています。
ただ、交渉すれば、当然いやーな雰囲気になってしまう可能性は高いですし、
何よりもコスト(時間や労力)が掛かります。
その覚悟をもって挑むべきなんですね。
お金支払う側だから楽させてよというお気持ちも分かりますが、
お互い神経使って丁寧に言い分を共有して
価格が安くなるポイント、
パフォーマンスを改善してもらうポイント、
妥協点を協力して見つけ出せると
むしろコストパフォーマンスの高いコミュニケーションになる事もあると思います。
制作ビジネスは結局人なので、
月収、年収で人を雇う事が一般的な現時点では
時間=価格という事です。
その時間を軽減する提案をすれば、制作会社も妥協点を真剣に話し合ってくれると思います。
ただし、どんな優れた商品でも必要ない人は必ずいるのと同じで、
この業者じゃなきゃダメだという事はないと思っています。